速読にご用心

速読やってると、身につかないことがいっぱいある。

1 解像度の悪い要約しかできなくなる(知ってるつもりの部分が肥大)
2 情報が知恵として沈降していかない
3 体験の空洞化
4 量をこなすことが質に転化されると勘違いする

リストアップしてみると、結果として経験から断絶された読書体験だけが積み重なっていくと言ってもいい。

【遅読のすすめ】

本を読むとき、意図的に速度を落とし、ナレーターがしゃべるスピードまでにしてみる。
そうすると、自分の過去の体験と、読んでいる文章が接続しやすくなる。

できれば、自分の呼吸のリズムを意識しながら、句読点にあわせて目線を動かしてみてほしい。
もし本に集中することができれば、この時点で文章から様々な知覚が顕れてくるはずである。
例えば会計の本でも、頭の中に目の前の情報がプレゼンテーションの図として「動き」が出てきくる。

速読をして、断片化された要約を持っているだけだと、それはあくまでも情報として保持しているだけで、理解までには至っていないのだ。


といっても、遅読に耐えうるコンテキストを持った本は、中々存在しない。
(芦田先生風に言えば、「ストック」本と呼べる)

ゆっくり読めば読むほど、伝えたいことが特にない本の場合は、その中身の薄さが露呈されるからだ。
だから、ビジネス本は基本的には遅読には向いていない。

ストック本に出会えた時、本当に読書が立体的になり、本から息遣いが聞こえてくる。
作者と対話しているみたいに、味わうことができる。

そういう体験をしてしまうと、その本の内容は忘れようがない。
自分の血肉となってくれる。


実はこのエントリーは、若い頃の自分に向けて書いていたりする。
大学時代は、いかに速読できるかに挑戦していて、結局今も身につかないまま。

だけども、ゆっくり読むことを覚えてから、本の要旨の理解度はあがったと思う。
解像度が、圧倒的に良くなった。


ということで、本に限らず、いろいろなことをゆっくり味わってみましょう。
遅い世界は、結構楽しいですよ。